人の体臭は、食べ物、ホルモン、汗の分量などによって、それぞれに個性を発揮します。

モテる香りとは?

体臭が変わるガムがあるって本当?

 「ふわりんか」というこの画期的な商品には、科学的根拠があります。ただ体臭が劇的に変化するというわけではなく、変わっても“ほのか”こ、というものらしいです。

アイデアのもとになったのは、ニンニクを食べると体からニンニク臭がすること。このとき香るのが悪臭ではなく芳香なら、人工的に芳香体質ができるのでは? こうした仮説をもとに研究が始まりました。

ポイントは大きく分けて2つです。香りの選定と分子量。そして、その芳香効果の確認です。

まず、香りの選定に入ります。香り分子がアルコールなどの体に悪いものではなければ、肝臓で分解されずにそのまま代謝されます。ニンニクのアリシンがその最たる例です。また、アンモニアやアセトアルデヒドのような分子が小さいものなら、毛穴から汗とともに排出が可能なはずです。この2点からスタートし、バニラの香りとバラの香りの2種を選択。ガムの開発に至ります。

続いて、空気中に分散してしまう体臭の測定方法について、本当に体から香るのかを確認をしなければなりません。まず、分散してしまう汗を集めるために、食べる前から手にビニール袋をします。その後、ガムを食べて汗をかきます。その数時問後に、ビニール袋中の空気ごとガスクロマトグラフィーにかけて、その汗においの中に香りの存在を確かめました。

このような方法で、実際に香るガムを食べて計測したところ、存在が認められ、商品化に至ったのでした。当初の販売目標では4億円という数字をかかげていましたが、時代のニーズにマッチし、発売半年で10億円の売り上げ達成となります。

しかし、ブームはそれだけに終わりませんでした。問い合わせが多く寄せられたのが、購買層の対象だった20~50歳代の女性以外の、40~50歳代の加齢臭に悩む男性が多かったのです。これにより、同社では加齢臭に悩む男性のニーズにかぶる「ちょい悪」コンセプトを軸に男性用香りガムを開発。発売後生産が追いつかなくて一時発売を中止するまでのブームとなりました。

劇的に体臭の変化を望む男性は、少し肩透かしを食らったようですが、個人差もあるようで、体感された方からのニーズに支えられ、第2弾の販売となりました。 体臭が気になるあなたはもう試してみましたか?


フェロモンは本当にあるのか?

その香りを身にまとうだけで女性にモテる。その効果を狙って日本だけではなく全世界の男性に売られた香水があります。女性に好まれる香りで異性をひきつけられたらいいなと思う、男性の潜在願望にマッチして、みごとにヒットを飛ばしました。ほかにはっきりとフェロモンの名前を冠にうたった香水もあります。フェロモンには媚薬的な効果を望む男性の気持ちが強いでしょう。昆虫では性フェロモンを始め攻撃や集合などのさまざまなフェロモンは認められています。さて、ヒトに関してはどうでしょうか?

1971年アメリカのウェルズリー大学心理学部の学生は、共同生活をする女子学生たちの月経がしばしば重なることに気づき、この原因を調べました。すると女子学生たちの月経周期の一致は、彼女たちの間でもっとも支配的な女子学生に近くなる傾向が見られました。このことから135人の女子学生の月経サイクルを調べたところ、わずか数ヶ月で月経の同調が見られる女子学生がいる一方で、そうでない学生もいました。同調を経験した女子学生たちは、ただ同じ寮で生活しているというだけではなく、ルームメイトや親友同士でいっしょにいる時間が長かったのです。

その後1998年に彼女は支配統制する女子学生のワキから汗を摂取し、この物質を被験者たちの上唇に塗り、その反応を見るという実験を行います。対照グループの学生たちの上唇にはアルコールが塗られました。この塗布を始めて4ヶ月後に、被験者たちの月経は支配的な作用をもつ女子学生と同調し、対照グループは自分たちの通常のサイクルを守っていました。女子が月経サイクルを同調させる能力は、フェロモンによるコミュニケーションに促されるものです。この効果は主に母と娘に強い相関がみられます。マクリントク効果、女子寮効果ともいわれます。

ヒトのフェロモンに関して、いくつかその作用が認められている物質があります。PDDというステロイド系の物質です。米国ユタ州のバーリナーのグループが、ヒトの皮膚から抽出した物質の中から見つけたものです。その物質があることで不思議とリラックスできるいう経験から、このにおい物質を嗅いで、嗅細胞からの脳への刺激を見たところ、反応が認められたということです。しかしこの効果については、調査の技術的な面や、ほかのグループで追試験がなされていないなどを指摘されています。

次に、ヒトフェロモンとして挙げられているのが、男性ホルモンのアンドロステインです。哺乳類のフェロモンとしてオス豚から摂取されました。この成分をメス豚に嗅がせると交尾を望む姿勢がとられる事から、豚の性フェロモンとして確認されています。甘い、不快な臭いが特徴で、男性は60%、女性は40%がこのにおいを判別できません。メス豚が交尾可能かどうかの状況を調べるために、家畜業者向けに商品化される成分です。

この物質を散布したイスに、座るかどうかの実験をしました。その結果、女性は好んで座り、男性はさける傾向が見られました。また、ヒトの鼻腔にこの物質を散布すると、内分泌バランスに影響があるとの報告があります。

その一方で、2004年に日本の企業がこの物質で実験をしました。異性の体臭に対して、お互いにどのように感じるかを評価するため、20~30代の男女各10名にTシャツを7時間着てもらい、そのTシャツの「臭気の強さ」と「臭気の不快度」を、男女各10名の評価者が評価しました。その結果、「臭気の強さ」に関しては、男女共に男性の着用したTシャツのほうが強いと判定しましたが、「臭気の不快度」に関しては、女性のほうが男性の着用したTシャツをより不快に感じていることがわかりました。

男性の体臭成分には「低級脂肪酸類」「ケトン類」「アルデヒド類」「アミノ類」「揮発性ステロイド類」などが含まれます。特に揮発性ステロイド類は女性より男性の体臭に多く含まれていることから、女性が不快に感じる男性の体臭は「揮発性ステロイド類」が大きく影響していると考え、揮発性ステロイド類に着目してこの体臭が増強されるメカニズムを調べるとともに、男性の体臭を抑える成分の開発に成功したという発表があり製品化されています。

また、2007年の「ネイチャー」誌には、嗅覚遺伝子の配列により、アンドロステインを不快と感じるヒトと、バニラのようにいい香りと感じるヒトがいることが報告されています。

欧米のワキガがセクシーと感じる人にはよろしい香りで、ワキガが苦手な日本人には、アンドロステインはあまり受けないということでしょうか。フェロモン香水によく入っているのが、このアンドロステインの成分だとすれば、日本人にはあまり効果が期待できないことがおわかりですね。

補足として、マウスやラットで認められた性フェロモンの実験結果3つを挙げておきます。1つ目は未成熟メスの群にオスを入れると性成熟が早まるというヴァンデンベルク効果。2つ目は性腺機能低下した成熟メスにオスのにおいを嗅がせると機能が回復する、ウイツテン効果。そして最後に、妊娠中に交尾相手を異なるオスのにおいと出会うと流産する、ブルース効果です。いずれもヒトと同じ哺乳類での実験結果として、ヒトへの性フェロモン作用解明の要因として期待されている実験報告です。


異性にモテる香りとは?

それは、ダーゲットの異性が好きな香り=モテる香りでしょう。

ターゲットが女性なら、花束を贈るときにリサーチすることができますね。バラが好きか、ユリが好みか。男性なら、柑橘系やウッディ系の精油を染み込ませたハンカチを貸して、反応を見るという手はいかがでしょう?セクシーな香りの代表としては、ムスクが挙げられます。ムスクの香りに心がそそられるという人はいるかもしれません。ただ、日本人では好き嫌いが分かれることもありますので、相手の反応を見てからのほうがいいですね。

日本人はひそやかに香るにおいが好きな傾向がありますので、あまり強い香りは、避けたほうがよさそうです。また、人種的な好みの差として、欧米人ではワキガや体臭がすきな香りという場合もありますし、日本人は無臭を好む傾向があります。不特定多数にモテる香りというのは、その人種が好む香りともいえるでしょう。

また、日本人に特に好まれる嗜好品に緑茶があります。緑茶の香りは日本人に身近に感じられる芳香成分です。近年は緑茶カテキンのダイエット作用目的で、世界的に飲まれてる日本生まれの機能性食品でもあります。機能性成分はカテキンだけではありません。この緑茶の成分のL-テアニンは、アルファー波増強作用によるリラックス効果を高めることが確認されています。また最近では、同成分が睡眠最善作用や認知症にも効くことが研究発表されるなど、大注目の成分なのです。ホッとする緑茶の成分テアニン。催淫効果はありませんが、おだやかな気持ちで相手との距離を縮めるのには、効果的な小道具になりそうです。

性的に興奮する香りは、動物や昆虫の場合にあります。メスがオスに交尾可能であることをそれとなく伝えるための化学物質が、性フェロモンです。イヌのオスはメスの月経のにおいにもすごく刺激され反応します。そして、5キロ離れた場所の白人を感知できるように、驚くほど鋭敏な嗅覚をもつがゾウ。彼らは発情期になると目から涙を流します。このねばねばした液体が性フェロモン的な役割をし、交尾へと導くことがわかっています。最近の研究ではマウスの涙にフェロモンがあることが発見され、オスの涙の効果が注目されています。

昆虫では、蚕のメスが交尾期になるとボンボコールという性フェロモンを分泌します。そして、オスがこのにおい物質を触覚で感知して、メスとの交尾に向かいます。蚕のオスは、におい分子たった1個でも興奮する、お手軽でかつ経済的な生殖活動を行っているのです。また、メス1匹は1億分の1グラムしかこのボンビコールをもっていませんが、これで10億匹のオスを惹きつけられるのですから、どれだけ蚕のフェロモンが強力かがわかります。

そこで話を人に戻しますが、年中発情するヒトは交尾ができることを相手に知らせる必要に迫られていません。種の保存のために交尾可能を知らせる性フェロモンが見つけにくくなっているのはこのためでしょうか?しかし、女性は生理時や性的に興奮した時に、発情ホルモンのエストロゲンが分泌されます。このときに独特のにおいが発せられるといわれています。性的な香りがする部分としては、女性気の周辺とワキがあげられます。このような部分に毛が生えるということは、重要な部分を隠す役割ととおもに、においを拡散するためとも考えられるのではないでしょうか?脱毛処理する現代の女性たちは、身だしなみと共に性的なにおいの発信を拒否しているともとらえられます。


すべての人の好まれる香りとは?

動物たちが好む(?)香りのトップはなんだと思いますか?

それはバナナです。ふつう動物の嗅覚は、生息する環境や食の嗜好に大きく左右される傾向があります。ハゲタカやモルモットは腐敗臭に、ハトは花の香りなどによい反応を示し、それぞれ異なる香りが選択されます。しかしあるとき、種が違う複数の動物ににおいを嗅がせて、彼らの脳がどのように応答するかを調べる実験をしました。すると哺乳類の犬から鳥類のアヒル、ハゲタカ、バナナなんて食べたことのない爬虫類のカメまで、このにおいでは高い応答が見られるのです。彼らは「バナナの香りはいい香りです。大好きです」とコメントをだしてくれるわけではないので、もしかすると大嫌いという応答なのかもしれません。動物たちの脳の神経がバナナの香りに大きく応答したことですが、大変興味深い実験結果です。このバナナの香りをたどると、もとはN-アミルアセテートという香料化合物質の一種。ほぼすべての動物が応答を示すことから、香りの実験に多用される物質です。

それでは、人はどうでしょうか?万人に好まれる香りというのは、残念ながらにおいの科学では解明されていません。統計学的に、たとえば100人中80人が柑橘系の香りを好み、または、ジャスミンやバラなど香りは多くの人に支持されて、幅広く商品化されているということしか、いえそうにありません。また民族によっても好きな香りは異なるといえます。炊き立てのご飯の香りが好きな日本人とワキガがセクシーを感じる欧米人の間には相容れない深い溝がありそうです。

ところで、その民族の隔たりを超えて愛される香りがあります。1970年から、2年に一度開催されているバラの品評会、世界バラ会議というイベントがあります。主催はイギリスの首都ロンドンに事務局を置く、世界バラ連合です。2006年の第14回会議は大阪で行われ、日本独特の文化である盆栽や生花の展示が行われています。2008年現在、世界からの加盟国は39カ国にのぼり、各大陸や地域に満遍なく広がっています。高貴なバラの香りは民族の垣根を越えて、欧州や中近東、南北アメリカ大陸、インド亜大陸などで好まれている香りといえます。ネパールや中国・雲南省からミャンマーにかけてが主なバラの産地で、北半球の温帯域に広く自生しています。じゅうたんの中から飛び出るなどの演出が得意なクレオパトラがシュリアル・シーザーを歓待したときは、バラの花びらや精油がふんだんに使えれました。古代ギリシャ・ローマ時代にはすでにバラの精油が製造されていました。また、ローマ帝国第5代皇帝のネロもバラを好み、宴会場にもバラ、庭園の池にもバラ、噴水からはローズウォーターという懲りよう。さらには、ネロの合図で天井からバラの雨が降り注いだといいます。もちろん、料理にもバラの花。バラづくしの宴会が伝えられています。

このように歴史上の人物が好んだことでも有名なバラは、中世の欧州ではあまりの人気に、その芳香や姿が人の心を惑わすとして、教会にタブーとされ薬草用途でしか栽培されなかった時期もありました。その後十字軍によりイスラムからもたらされたバラは、ルネッサンスで復活し再びその地位を浮上させ、フランスの皇帝ナポレオンの最初の妻ジョセフィーヌに愛され、約250種が集められ、記録に残されました。

さて、万人に愛される香りは本当にバラでしょうか?においが科学的に解明されてきたといえそうなのは、におい物質と炭素数との関係です。さきほどのバナナの香りのもとになるN-アミルアセテートは、炭素が5つ並んだアセテート類の化合物の一種です。これらは炭素の数により物理的性質が徐々に変わっていきます。この炭素の数が増えるにつれて、においが濃くなるということはありません。実験ではイヌとヒトはアセテート類、脂肪酸類、アルコール類の炭素数3~5くらいの物質にもっとも強く反応します。その数値が、万人に好まれる香りを裏付けているようです。しかし、このなかには蒸れた靴下のにおいのもとである吉草酸が含まれるのです。決して好まれているとはいいがたい結果に、落胆しそうになります。

また、なんとヒトの精子にはにおいセンサーがあり、しかも花の香りを好むというドイツのルール大学の実験報告があるのです。これは、100種類の香り物質を使って、精子がどのような香りを好むのかを実験するために容器に精子を入れ、におい物質を細かい管で注ぎ、精子の反応を見るというものです。その結果「花の香り」の香料に使われる物質にもっとも強く反応することがわかりました。精子が卵子に向かって泳いでいけるのは、卵子が放つ「花の香り」に引き寄せられてたどりつくからだ、という研究結果が得られる日が、いつかくるかもしれません。

生命の誕生レベルと香りの関係。ひてはヒトフェロモンの謎を解く鍵がここにあるのかも…。わくわくしませんか?


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